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Uber新料金導入から3週間の全データ公開〜300均地獄のその後

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 福岡と京都のウーバーイーツ配達員の報酬に「新料金」が導入された3月第1週目は、まさかの「300均ショック」で収入がガタ落ちした。

 300メートルの配達であろうと4キロ走ろうと、距離に関係なく1件あたり一律300円というあり得ない事態が続いた。

 ダイナミックプライシングに、まさにダイナミックに搾取される日々。いや、ようわからんけどダイナミックプライシングそのものすら機能してないんじゃないか?と思えるひどい一週間だった。

 その間、自分も参加しているウーバーイーツユニオンで緊急声明を発表したり、

 僕自身も共同通信と朝日新聞から電話取材を受けたりと、バタバタしていた。

 悪夢の一週間が明けると、300均の呪いが解けたかに見えた。しかし、1000円を超える大盤振る舞い案件が収入を押し上げる日があったかと思えば300均がさりげなく蘇ったりと、まったく油断できない。

 そこで、この3週間の全配達データを集計し、自分なりに分析を試みた。

この記事は2021年3月21日に公開しましたが、5月5日になって、旧料金に換算する際の計算間違いを発見しました。

そのため各日の集計を示すスプレッドシートを再計算後のものに差し替え、本文中の数値や表現も、必要に応じて修正しています。

報酬は日々ブレまくっている

 下の表は、毎日の報酬(配達料)の合計を、旧料金体系に換算した報酬と比較したもの。左から2番めの列「新・旧料金比率」が、旧料金と比較した割合である。

報酬は日々ブレまくっている

報酬は日々ブレまくっている

 データをとった19日の稼働日のうち、半分強の10日は減収となり、特に最初の2日はほぼ3割減! しかし後半になると、一時的に賃上げ状態になることもあり、結果として半分弱の日は増収となっている。

 トータルとしては減収と増収の日が半々の割合だが、とにかくアップダウンのブレが激しくて、実態を把握するのが難しい。

 以下、かなり長くなるが時系列でデータを並べ、動きを追ってみる。新料金の動向が気になる全国配達員の方、よろしければ参考にしてください。

3月第1週は300均の悪夢

 新料金導入初日にくらった衝撃については 福岡と京都のUber配達員はモルモットか(激怒!) で報告したとおりだが、以下、毎日のデータを列挙してみる。

3月1日、新料金導入初日は衝撃の100円台で開幕

3月1日、新料金導入初日は衝撃の100円台で開幕

 右下から3番目の「300均の出現率」を見ればわかるように、新料金導入の初日は300均(300円と301円、またはそれ以下)の案件が81%を超えた。

3月2日も収入3割減

3月2日も、ほぼ収入3割減

 そして2日目も、300均オンパレード。ツイッターでは、福岡と京都の配達員の悲痛な報告が溢れかえった。

ブラックボックスの「ベース料金」が、新料金の最大の問題

 なお、ここでウーバーイーツの報酬体系を簡単に説明しておく。自分がUberの配達を始めた昨年4月から今年2月末まで、京都市での配達員報酬の料金体系は以下のように算出されていた。

320円(店での商品受け取り215円 + お客さんへの商品渡し105円)+ キロ数 x 60円

この金額から、ウーバーが手数料として10%を引くので、1件の配達ごとに受け取る報酬額は

(320円 + キロ数 x 60円) x 0.9 となる。

例えば、配達距離が1キロだったら、 (320円+60円) x 0.9 = 342円 を報酬として受け取ることができた。

 距離単価(かつて150円/キロから60円に引き下げられた)が安すぎるとか、クエスト(指定の回数を達成したらもらえるボーナス)に依存してしまうため長距離配達に当たるほどバカを見るという弊害はあるものの、とりあえず、報酬額の根拠は明確だった。

 右の図は新料金導入後の、個別の配達の料金明細である。

 実態不明の「ベース」と、最低額の300円に帳尻合わせするための「配達調整金額」しか表示されていない。「ベース」の算出基準はまったくのブラックボックスなので、報酬額の根拠がまったく見えない。

 3月5日に ウーバーイーツユニオンが出した緊急声明 の中でも、ベース算出の根拠の公表を求めているので、その部分を一部掲載する。

(2)新料金体系の「ベース」算出の元となる基準値と計算式を公表せよ

 今回の混乱の中で福岡と京都からは、1件の配達料金が100円台という目を疑うような案件や、配達距離が0.3キロであっても4キロであっても一律300円などという事例が、数多く報告されている。

 従来は、アプリ内の「売り上げ状況を確認する」から、受け取り料金、受け渡し料金、距離料金を確認することができた。
 しかし3月1日以降、新料金体系が導入された地域において、アプリで確認できる料金の内訳には、「ベース」と「配達調整金額」しか明記されていない。

 「ベース」が、いかなる基準値と計算式から算出されるのかは、完全なブラックボックス状態となっている。これは、「新料金が適正かどうか」を判断する前提条件すらないことを意味する。

 受け取り料金、受け渡し料金、距離料金と配達時間料金それぞれの基準となる値と、「ベース」の計算式を、ただちに公式発表することを要求する。

「福岡と京都で導入された新料金体系に関する緊急声明」より一部掲載

 しかし、ウーバージャパンからは、何の公式アナウンスもないままだ。

 300円や301円というふざけた金額が「バグ」なのか本気なのか。このままでは、うやむやに既成事実化されそうな気配が濃厚である。いや、すでにそうなっているのか…

長距離ほど、ダメージは大!

 3月3日と4日は、すべての配達が300円(または301円)均一となった。

3月3日と…、

3月4日は2日続けて、全件が300均!

まさに300均

 400メートルの近距離配達だと3%減だが、例えば4日の最後の配達のような2.4キロの中距離案件だと、旧料金換算の報酬と比べて約72%、つまり3割近くの減収となる。

 つまり、距離が長いほど300均のダメージは大きいことがわかる。

 アプリの「売り上げ状況」にズラッと並ぶ300円(たまに301円)を見ていると、配達を続けるのが本当に屈辱的になってくる。

 自分が主に動いている山科区だけでなく、たまに九条山を越えて京都市内に出た時も、言葉を交わした配達員の多くは「300均はバグで、いつかは修正される」と考えていた。

 3週間経過した3月22日現在も、ウーバージャパンは、この時の異常な状態に対する説明責任を果たしていない。

3月5日の報酬

3月5日は、300均が9割を越えているが…

300均が半分を割った

翌6日には、300均が半分を割った

 3月6日(土)には、初めて300均出現率が5割を切った。一日の収入の減収分も3%と、初期の3割減に比べればかなり「まし」になった。