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白滝谷にも渇水の危機か

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8月に入ってから、猛暑日はとどまる事を知らない。そして、ルアーで渓魚を釣る事を覚えた俺の、渓流への想いも熱くなるばかりだ。しかしまだ、ルアーでは可愛らしいリリースサイズのイワナとアマゴしか釣っていない。

21日、水量が安定していそうな明王谷、その上流の白滝谷に向かった。そしてこの日ようやく、塩焼きで食うイワナを一尾、持ち帰ることができた。

死者の出た三ノ滝に思う

8月15日に三ノ滝で死者が出た後、はじめて明王谷に入ることになる。林道入り口で車を止め、ちょっと緊張して、牛コバへの林道を登りはじめた。

つづら折れの林道を登りきってかなり標高をかせいだあたりで、林道脇にサンカクヅルの蔓を見つけた。

林道で見つけたサンカクヅル

ヤマブドウを小ぶりにして粒数を減らしたような実は、生で食っても果実酒にしてもめちゃくちゃ美味い。

自分は、禁漁が近づくシーズン終盤、つまり9月中旬以降になったら、サルナシなど食える木の実探しに熱中するが、サンカクヅルは滅多に見つけたことがない。

樹が小さくて、実がつくかどうかはわからないが、ちょっと興奮を覚えた。

ほぼ林道を登りきって、三ノ滝への降り口に着いた。つい1週間足らず前に、ここで死者が出たのだ。

先日も死者が出た、山深い明王谷

自分もかつて、この滝の横の斜面を、木の根をつかんで高巻きしたことがあるので、とても他人事には思えない。

事故の詳細はわからないが、同じ日に自分も沢(伊賀谷)で釣りしてたこともあって、この遭難の事は忘れることはできないだろう。

ここから三ノ滝入り口を越えると、崖の崩壊地があり少し緊張するが、白滝山への登山口となるワサビ谷出会いからは、おだやかな道となって、橋を三つ渡ると牛コバに着く。

ついに良型イワナを釣る

6時半ごろ、牛コバから白滝谷沿いの道を少し登ったところで、釣り始めた。林道を30分以上歩いた後なので体全体が火照っており、偏光グラスがすぐに曇ってしまう。

チビ岩魚が出てくれて、まずはひと安心

気が急くが、いったん釣りを止めて、沢の水で顔を洗ったりしながら顔面から完全に熱が引くのを待って再開。

そして、さっそく7時ごろに最初の一尾が釣れた。小さな可愛らしいイワナだ。

白滝谷は、ゴロゴロの丸い巨岩の間を、適度な落差で流れ落ちるわかりやすい沢だ。落ち込みと、それに続くヒラキから、かなりの確率でイワナが出て来る。

釣り始めてすぐに、何尾かの小イワナが釣れてくれたので、気持ちに一気に余裕が出て楽しめた。

開けた谷にはミズナラの大木に混じってブナの樹も見える。いるだけでも気持ちのいい渓だ。

渓歩きの幸せを全身に感じながら、テンポよくキャストを続けた。そして、掛かったチビ岩魚を放しながら遡行する。

日が上がると、アブがしつこくつきまとうようになったが、虫除けスプレーを顔にかけたらマシになった。

左手の浅場から、良型イワナが飛び出した


そして9時ごろ、何の変哲もない浅いヒラキから走り出た、23センチ近いイワナを釣った。

迷うことなく、塩焼き用に命をいただくことにした。初めて、ルアーで釣った渓魚を魚籠に収めた。

前に来た時よりも、明らかに減水しているが、釣りにくいというほどの変化は感じない。

白滝谷の沢登り満喫

やがて、直登できるものの、少し大きめの滝が現れた。

滝を登って核心部へ

滝壺には倒木も沈んでいて、いかにも大型の渓魚が潜む気配が満ち溢れている。

ここで少し粘って、ルアーをスプーンからミノーに交換して投げたりしてみたが、何の反応も引き出せなかった。

その滝を直登した先には、綺麗な滑(ナメ)や斜爆など、変化に飛んだ流れが次々に現れた。

ここまで登って来ると、流れは細く、やはり水量が減水気味なのがわかる。それでも、わかりやすいポイントにルアーを投げると、確実にイワナが出て来た。

やがて夫婦の滝に到着。大きな滝壺で、少し粘ってみたが、何も反応はなかった。

「夫婦の滝」の巻き道を登ると、そこから上流は一転して、穏やかな瀬が続く流れになった。もう少しだけ上流に行ってみようと、釣り続けた。

倒木の隙間からイワナが飛び出した

倒木の隙間から慎重にサイドキャストしたら、小さなイワナが飛び出して向こう合わせで釣れた。こういうポイントは毛針釣りでは、まず狙えない。

この先の上流への未練もあったが、明るいうちに坊村まで下山したいので、竿をたたんで登山道に戻った。

夫婦の滝から下流で、道を見失いかけて、5分か10分ほど雑木林の急斜面をさまよったが、何とか巻き道を見つけられた。

炭焼きの跡が残っている

牛コバまで下る道中には、炭焼きの跡も残っていた。数十年前までは人の営みがあったことを感じさせる、本当に豊かな谷だ。

このような炭焼き跡を見ると、愛知川支流の神崎川源流を思い出さずにはいられない。

日帰りで行くにはもったいないほどスケールのでかい谷で、テンカラ釣りを覚えたころ、テント担いでの一泊二日のキャンプ釣行でよく通った。あっち方面は長い事行ってないなあ。

夕まずめの坊村は不発

坊村に着いた時点で、まだ6時と明るかったので、ダメ押しで渓に下りた。

ここでは5月下旬の真っ昼間に来た時、テンカラで面白いほどアマゴが釣れた。 → 葛川、支流の誘惑

塩焼きにできる良型アマゴが釣れることを念じて、20分ほどの間ルアーを投じてみたが、何の反応もなかった。

結局この日は、白滝谷のイワナ一尾を手土産に、大満足で帰路についた。

8月26日、白滝谷も渇水の危機か?

5日後の8月26日、またもや白滝谷に来た。前回と同じく、朝6時半には釣り始めたが、どうも調子が出ない。渓全体の流れが、明らかにこれまでと比べてショボくなっているのだ。

前日の雨雲レーダーでは滋賀県西部に強い雨雲が出現していたので、ひと雨降って、流れが少しは太くなっているかと期待していた。しかし、明らかに流れがか細くなっている。

渇水気味の白滝谷で、かろうじて一尾釣れた

落ち込みから下流に広がるヒラキも、水量が少なすぎて鏡のように平らになっており、うっかりアプローチした時に走り去る魚の影も明らかに少ない。

昼までかかって、二条の滝まで釣り登った。その間に触れることができた渓魚は、17センチぐらいの小さなイワナを一尾のみ。水深10センチにも満たないほどのチョロチョロ瀬と化した、流れのど真ん中にスプーンを投入した途端に、瞬時に飛び出したイワナだ。

釣り始めから昼過ぎに「二条の滝」で納竿するまでの6時間ほどの間に、その一尾を釣ったほかは、明確なアタリが3度ほど、そして同数程度、水面で小さなイワナをばらしただけだった。

サルナシの蔓。実はない

明王谷の牛コバ付近にまで下れば、奥ノ深谷、口ノ深谷と合流して、水の流れは一気に太くなる。この日の第2ラウンドのため、口ノ深谷出会いを目指して下山した。

とちゅうで、サルナシのツルを見つけたが、今年は実がならない年なのか。

明王谷には先行者がいた

目指した牛コバの下流には、すでに釣り人が入っていた。と言っても、とっくに昼を回っているのだ。こんな時間帯まで、明王谷を独占できるなどと考える方が甘い。

エサ釣りをしていた女性に声をかけると、3人で来ていて下流に仲間の2人が入っているとのこと。ただ、沢を歩き倒すタイプのグループには見えなかった。気をとりなおして「三ノ滝」下り口の上流まで林道を戻り、やや急な斜面をくだって渓に下りた。

ここまで下ると、さすがに流れはグッと太くなっている。

減水しているとは言え、大岩をかんで流れる複雑な荒瀬はいかにも、アマゴがギラっと反転して飛び出しそうな気配に満ちている。短いレンジでくまなくスプーンを流したが、しかし、ほとんど反応はなかった。

ただ一度だけ、流れを横切るようにラインがツツツーっと不自然な、躍動的な動きを見せた。おそらくルアーをくわえた渓魚が走ったのだと思う。ハッとして合わせたが不発だった。

ヒラキの下流からは慎重にアプローチしてスプーンを投入したが、近寄る渓魚は何度か見たものの、食わせるには至らず。

この日は結局、一尾も持ち帰ることなく、まだ明るい6時前に帰路についた。

「このまま猛暑が続く限りは絶望的だな、9月の長雨まで釣りは無理かな〜」と悲観しかけたが、考えてみれば、渇水気味の状況こそ、テンカラの出番じゃないか。

9月末のシーズン終了まで、残すところ1ヶ月あまり。前回からはルアーに専念してきたが、初心に戻ってテンカラも追求してみよう。