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アシビ谷とツボクリ谷

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ものすごく久しぶりに、葛川の名渓のひとつ、足尾(アシビ)谷と、その枝谷であるツボクリ谷を釣り登った。林道はかつての面影がないほど荒れ果てていたが、沢のスケールにはあらためて惚れ直した。

朝マヅメの沢割り交渉

足尾谷は、エサ釣りをしていた90年代には何度も通い、テンカラ釣りに完全に切り替えるキッカケにもなった思い出深い沢だ。しかし少なくとも10年近く、行っていなかった。

気合いを入れて4時に出発し、5時前に367号線旧道のアシビ谷出会いに到着したら、なんと、すでに一台のバンが止まっている。しかも家族連れだ。薄暗い朝まずめからバーベキューするのかこの人たちは??と怪訝に思いながら、足元の準備をしていると、お父さんが「沢割り」交渉しにやって来た。

林道は荒れ果てているが、谷は健在だった

自分としてはなるべく上流で釣りたいので、発電所あるいはアシビ谷小屋までの下流で釣りたいという、そのファミリーの思惑とは見事に利害が一致した。お父さんとの約束通り、発電所とアシビ谷小屋の中間地点近くまでは、竿を出さずに歩く事にした。

歩き出していきなり、林道が派手に崩落していた。いつの台風の被害なのかわからないが、昔はオフロードバイクで入れていた林道突き当たりまでの間、橋も何箇所か流失している。

道は往年の面影がないほど荒れ果てていたが、広々とした沢のスケールは健在だった。

山小屋の手前からテンカラで釣り始めた。釣り始めてすぐに、魚が飛び出したり、糸フケでアタリに気づかずバラしたりした。こういう、最初から釣れる気配満々の時は、なぜか、なかなか魚を手にできないことが多い。

日が差して明るいアシビ谷

実際、いくつかのチャンスをモノにできないまま、ツボクリ谷出会いまで上がって来てしまった。そこで、ルアー ロッド に持ち替え、アシビ谷本谷の遡行を続けた。

ところどころで、記憶通りのゴルジュ状の流れや、突如として渓相が明るく開けるところなど、懐かしいポイントもあった。しかし、さすがに10年ぶりぐらいなので、ほぼ新天地の沢を登る感じだ。

水量はやや減水気味。上流が湿原状のため、タンニンを含んだ水質なのだろうか。キンキンに透き通った明王谷とは違って、大きめのプールや滝壺は少し茶色っぽく淀んでいる。

ここぞというポイントで、スプーンへの反応はあるが、一尾も手にできないまま、滝が連続する核心部に入った。それぞれの滝は直登できる程度の大きさだが、この谷こんなに険しかったっけ?という感じで、次々に滝が現れるので、まったく気が抜けない。

2段の滝の上下から魚が飛び出した

2段になっている滝の、下段の滝壺で明確なアタリがあった。下段の滝を直登し、上段の滝の落ち込みにスプーンを投入すると、瞬時に魚が飛び出した。しかし水面に出たところでバラしてしまった。瞬時のことでアマゴかイワナかは判別できなかったが、20センチは軽く越えていた。

釣れなかったのは悔しいが、滝の上下の、思った通りのポイントから確実に魚が出たことが嬉しかった。

アシビ谷の上部には巻き道があるかどうかもわからず、このまま遡行を続けると引き返すのが大変だと判断して、いったんロッドを畳んで沢を下り始めた。沢は登るより下る方が、はるかに気も使うし筋肉も張る。(実際、次の日の筋肉痛はこたえた)

ツボクリ谷の小イワナ

昼ごろ、ツボクリ谷との出会いまで下って来た。この谷は、京都府最高峰の皆子山への登山ルートでもある。昔、登山とエサ釣りとで、少なくとも2回は登っている。だから、下山路に関しては何の不安もなく、遡行を始めた。

ツボクリ谷に入って、やっとチビイワナが釣れた

アシビ谷の本谷よりは小さいが、適度な落ち込みが次々に現れる。そしてすぐに、小さなイワナを釣ることができた。

朝6時から釣り始めて7時間。アシビ谷での長い不発のあと、ようやく手にした一尾だ。

その後、次々に現れる落ち込みとそれに続くヒラキで、ほぼ確実にイワナが釣れた。

ツボクリ谷をぐんぐん登る

いずれも15センチに満たない、可愛らしいリリースサイズだが、オレンジ色の腹部やヒレが美しい。典型的な、天然のニッコウイワナのようだ。

アシビ谷の本谷と違って、水質も透き通っている。何とかして、20センチを越えるキープサイズを釣りたかったが、明るいうちに発電所あたりまで下りたいので、引き返すことにした。

けっこう大きな滝に差し掛かったところで登山路を探したが、やはり、この谷も台風被害で道が相当荒れているようだ。

かつては、沢沿いの登山道を迷う事なく下った記憶があるが、崖崩れで寸断された部分もあって、ほとんど、沢本体をそのまま下る形になった。

アシビ谷の小アマゴ

ツボクリ谷を下り切ってアシビ谷に戻り、寸断された林道を下流に戻る。

朝、沢割り交渉したお父さんは、あの後、どこまで釣り登れたのだろうか? 昼間の間に、さらに別の釣り人が入っている可能性もあるが、夕方のアシビ谷は釣れそうな気配に満ちていた。

夕方のアシビ谷で飛び出したアマゴ

発電所より少し上流まで下って、ルアーロッドを出す。

かつてアシビ谷に通っていた頃、釣り始めポイントにすることが多かった小さな落ち込みに続くヒラキの、対岸の浅瀬にスプーンを投げた。

すると、スプーン着水とほぼ同時に瞬時に飛び出したアマゴが、向こう合わせで釣れた。

対岸の浅瀬からアマゴが飛び出した

一日中、イワナを見続けた後に手にした小さなアマゴは、銀色の刃物のようにシャープで、パーマークがくっきりして、まさに渓の宝石。

つくづく、美しくてカッコイイ魚だなと思う。

1日かけてアシビ谷とツボクリ谷を登り下りして、持ち帰りサイズは結局釣れなかった。しかし、ルアーで小アマゴも釣れたという事で、大満足して車に戻った。