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葛川、支流の誘惑

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この日は、伊賀谷の林道突き当たりから沢通しで釣り登り、夕まずめ時は葛川の本流を狙うという計画。しかし、朝のんびりし過ぎて6時前に出発。しかも、前日にガソリン入れてなかったので、堅田でガソリンスタンド求めてうろうろするハメに。

結局、葛川本流の町居には7時に到着した。とっくに陽は上がっており、カラッと快晴。川幅いっぱいに広がる瀬の、約半分はまだ比良山の日陰になっていたが、すぐに陽がさして流れ全体がキラキラ輝いた。

朝の本流では無反応

朝の輝く水面は気持ちいいが、毛針の現認が難しくて釣りにくい。明る過ぎて、魚が飛び出す気配も感じられない。ここは、がんばってせめて1時間前には到着しているべきだった。朝まずめとまで行かなくても、日光が照りつける前なら釣れる可能性がありそうだ。

町居付近の葛川本流

町居集落のすぐ上流にオボレ谷という枝谷が流れ込んでいる。「今年は本流を攻める」と誓ったものの、枝谷が合流してたら、どうしても釣り上がりたくなってしまう。

地元の中学生ぐらいの少年が、犬を散歩させながら河原に降りてきた。最初の小堰堤まで、浅く開けた流れで毛針を振ったが、チビアマゴも何も出なかった。もうちょっと増水してる時の方がよさそうだ。

町居集落から上流は、まっ平な中洲の両側に流れが2分している。比良山側の流れの方が、6:4で水量が多い感じか。前々日に雨がしっかり降ったせいか、やや白泡が強く、テンカラ釣りには流れがきつすぎる。もう少し減水したら、もっと釣りやすくはなるだろうが、この流れの中にアマゴがいないはずはない。やっぱり自分が下手なのだ。

白泡の強い瀬では、ルアーロッドに持ち替えて、下流からスプーンも投げてみた。広い瀬の中、ちょっとずつ方向を変えて上流に投げては引くが、アタリらしきものはない。そもそも、まだルアーで一度も魚を釣ったことがないから、どういうアタリが来るのもわかってないのだが。

結局、確信が持てないから、すぐにテンカラ竿に持ち替えることになる。そうこうしているうち、釣り始めから2時間近く、ほぼ魚の反応がないまま葛川漁協近くまで来た。

天然魚か、野生魚か

底石の凹凸がそのまま水面に現れている、やや流れの強い浅瀬から、ようやく1尾を手にすることができた。ヒレピンの野生アマゴだ。成魚放流じゃなくて、ヒレがピンピンと綺麗なアマゴを釣ると、つい「天然アマゴ」と呼んでしまうが、正確には「野生アマゴ」と言うべきか。

「イワナをもっと増やしたい」の著者・中村智幸氏の分類によると、その川にもとからいて遺伝子がその川固有の魚が「天然魚」(「地付きの魚」「原種」とも言う)で、天然魚と放流された養殖魚が交配して生まれた魚を「野生魚」と呼ぶ。放流されて時間が経ち、その川になじんだ魚も野生魚と呼ぶらしい。

明王谷のチビアマゴ

10年以上前になるが一度だけ、葛川漁協が行う稚魚放流を手伝いに行ったことがある。晩秋に放流した稚魚が、翌年の5月か6月にはこれくらいまで育つのかもしれない。

葛川漁協の反対側には、比良山から明王谷が流れ込んでいる。枝谷の誘惑に抗しきれず、合流地点の段々瀬に毛針を投入すると、10cmほどのチビアマゴが飛び出した。背中が微妙に青緑がかってるのが、明王谷っぽくて美しい。

367号線の橋の下付近の、流れの脇に、夏場ならカワムツかウグイが食いつくようなほぼ止水状態のプールがあった。軽い気持ちで毛針を投げてピックアップしたら、クネクネと重たい抵抗があった。引き寄せたら、胸びれのない成魚放流アマゴだった。遊泳力がないので、こんなところにたまっているのだろう。

その成魚放流アマゴを放して、ふたたび本流に戻った。葛川漁協の養魚場横の良さげな落ち込みからも、いかにも魚影が濃そうな段々瀬からは反応はなかったので、車に戻って中村小学校まで移動した。

伊賀谷入り口の誘惑

伊賀谷の林道入り口の、堰堤の広場に駐車。今日も停まってる車はないので、先行者はいないと考えていいだろう。林道終点まで歩いて、そこから左股を釣りあがって八丁平まで登り詰める予定だったが、木漏れ日にキラキラ輝く明るい渓相をみてたら我慢できず、堰堤のすぐ上から入渓した。

伊賀谷は苔むした岩が多い

瀬の脇や開きなどわかりやすいポイントから、ヒレのきれいな、パーマークのくっきりしたアマゴが、連続で飛び出す。10〜16センチぐらいの可愛らしいアマゴを、釣っては放し釣っては放ししながら、次の堰堤に着いた。

ここでルアーロッドに持ち替えて、堰堤の白泡周辺にスプーンを投入。コースを変えて何度か引くが反応ないので、あっさり諦めてテンカラに戻る。

このまま林道沿いに釣り登ろうと思ったが、二つめの堰堤の上流では、絶対にアマゴが飛び出すはずの段々瀬や開きなど鉄板ポイントからも、なぜか反応がない。案の定、若い兄ちゃんが二人、上流から岩伝いに降りてきた。

両手を開けるためのリュックも持たず、竿は買った時のプラケースに入れて手に持ったまま。しかも短パンにビーサン履きという、まったく緊張感のない二人組。川遊びの延長で、ちょっと谷に入ってみましたという無防備な感じが、微笑ましい。

しかしさすがにこの時点で、上流に行こうという気は失せた。夕まずめまでの時間を明王谷で過ごすことにして、坊村に向かう。

明王谷入り口でアマゴが入れ食い

伊賀谷も明王谷も、90年代末、自分がテンカラ釣りに目覚めて最もハマってたころは、林道に車で入ることができた。しかし、いつのころからか、全面通行止めになっている。

ここ数年の、地球がブッ壊れたとしか言いようがないような集中豪雨被害を見てると、素人の車を通行禁止にするのは仕方ない事だと思う。何より、支流を釣ろうと思ったら足で歩くしかなくなるわけで、場荒れは少しはマシになったのかもしれない。

明王院の橋から谷に降りて、エルクヘアカディス(もどきの自作毛針)を投入すると、いきなり良型アマゴが飛び出して、合わせに成功。その直後、やや強めの流れに投げた毛針にもアマゴが飛び出す。まだ正午というのに、立て続けにアマゴが毛針にかかった。

入れ食いかと思った

久しぶりに経験する「入れ食い」に近い状態。「これは幸先いいに違いない」と踏んで、普段ならキープする20cmほどの良型もリリースしたぐらいだ。(後で、すぐに後悔したが…)

この渓は明るい白砂と色とりどりの玉石、それにちょっと青みがかった透明な水のキレがたまらなく美しい。

2011年の秋に尺近いイワナを釣った小堰堤(正確には、堰堤じゃなく、鉄の人工物が堰堤状の流れをつくっている)では、期待して粘ってみたが、小アマゴが飛び出したのみだった。しかし、アクセスが容易で渓魚がスレまくっているはずの坊村で、これだけ連続してアマゴが釣れたのは初めてだ。

気を良くして、三ノ滝の上流をめざして林道を登る。かつては車でも入れたこの林道は、武奈ヶ岳登山や比良山縦走ルートの拠点である牛コバまで続いている。つづら折れの道は落石でやや荒れている。天気が悪い時は、歩いて入るのも危険かもしれない。

明王谷核心部では苦戦

さっきまではカラッと晴れていたが、三ノ滝を超えたあたりで入渓する時には薄曇りになっていた。

この入渓ポイントからは、明るい開けた段々瀬が続く地点に降りると思ってたが、記憶違いだったようだ。明王谷に何度も通ったのは20年近くも前のことなんで、もっと上流の、白滝谷との出会い付近の記憶と混同しているのかもしれない。

大きなプールで、表層に3尾のアマゴが浮遊していた。テンカラ竿を、通常使ってる3.6メートルから、3.2メートル竿に短いラインという小沢用仕掛けに変えたため、毛針が微妙に届かない。ルアーロッドに持ち替えて、奥の落ち込みから口にスプーンを投入してプールの出口まで引いたりしたが、何もおこらなかった。

こういう時、3.6m竿と長いラインに交換したり、逆さ毛針やパートリッジ&オレンジとかのソフトハックルフライで誘いをかけるなどの作戦を試すべきなのはわかってるが。谷が暗いと、一箇所で粘ってあれこれ試そうという気持ちの余裕がなくなって、つい、さっさと見切りをつけて先へ先へと行ってしまいたくなる。言い訳に過ぎないのだが。

その後も、落ち込みの肩などで、20センチを余裕で越える良型アマゴの魚影を何度も見た。しかし、3時〜5時の間に、毛針への飛び出しを確認できたのはたったの2〜3回。スーッと近寄った渓魚が毛針を見切る瞬間は何回も見た。

やはり、水中に沈めた毛針で確実に釣る方法をマスターしないと厳しいな。

口ノ深谷が合流してくる地点で、林道に上がった。晴れて谷が明るかったら、もう少し粘っただろうが、谷が薄暗いとどうも気持ち的にダメだ。ここは、真夏のカンカン照りで、ちょっと減水したぐらいの時に、是非また来よう。

しかしこの曇り空は、夕方の本流にはちょうどいいのではないか。落石で荒れた林道を坊村まで下り、中村大橋まで移動。橋のたもとの、今は休業中と思われる喫茶店横に駐車した。

夕まずめの拾い釣り

旧道を中村小学校まで戻り、中村小学校の橋から入渓。道から見る流れは5日前より増水してて、毛針釣りは難しいか?と思えた。しかし実際に川に降りてしまうと、ポイントはそこかしこにある。

5日前に、24cmアマゴが迫り上がって来たポイントに来た。絶対に出ると確信して毛針を投入したら今度は、逆U字型ジャンプで飛び出した。しかし、合わせられず。その後すぐに流したら、別の小型アマゴが追っかけて来ただけだった。

夕まずめ、良型は釣れなかったが…

良型アマゴが派手にジャンプして飛び出して掛け損ねたから、そのアマゴは大概はもう出てこない。そう思ってさっさと諦めてしまったが、夕まずめなんやから、もう少し粘ってみてもよかったかもしれない。

しかし、暗くなる7時まで、まだまだ良いポイントがたくさんありそうなので、上流へ。

367号線の護岸ブロックが早瀬を形成してるところの、ブロックの切れ目の深み(いかにも大物が隠れそうな)のタルミから、クネクネした引きで釣れた。ここは減水時には、数少ないポイントのひとつになりそう。

この時キープしたアマゴは、後で見たら胸びれが欠けた成魚放流アマゴだった。

中村大橋のあたりで7時になったので、この日はじめてエルクヘアカディスに変えた。1投目から反応があった。何とか、塩焼きで食う1尾を追加したく、駆け足で、わかりやすいポイント(底石があって、トルクある流れの瀬)だけを拾い歩く。

瀬肩の流れのゆるいところで、20cm超えるアマゴがジャンプしたが合わせ損ねた。そのすぐ後に流すと、黒い魚影が毛針を追って来たが、すぐに見切ってUターンした。

それを機に、納竿して367号に出た。