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明王谷で死者が出た日、伊賀谷を登る

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8月15日には、6月に遡行した伊賀谷を再訪した。翌日になって知ったのだが、この日、明王谷の三ノ滝では、ザイルが首に巻きつくという悲惨な事故で死者が出ていた。

沢登り中、首にロープ絡まって宙づり、男性が死亡 滋賀・比良山系の滝(8/15京都新聞)

自分はロープを使って滝を攻めるような本格的な沢登りはしないが、三ノ滝と言えば、明王谷に入った時、いつも釣り始めるポイントのすぐ下流だ。自分も昔、この滝を高巻きで越えた事がある。とても他人事とは思えない。

自分の場合、転落したら死ぬような危険な場所は最初から避けているが、何ということのない場所で転倒したりして、生傷は絶えない。できるだけ転倒ゼロを目指そうと強く思った。

やや渇水の伊賀谷、貸し切り状態

伊賀谷は林道の突き当たりで左股と右股に分かれている。右股は八丁平への急坂に沿って急斜面を突き上げるような小沢だが、大きく湾曲しながら八丁平へと到達する左股は遡行距離も長く、変化に富んだ素晴らしい沢である。

ジメジメした日には必ずヤマビルの猛攻にさらされるが、天然繁殖するアマゴとイワナの魚影は濃い。(ただし、大きいのはなかなか釣れない)

落ち葉もカラカラに乾き、今日はヤマビル出現の不安はない

林道の突き当たりまで歩いて、その先から釣りに入る人は滅多にいないとは言え、左股ぐらいの小規模の沢だったら、先行者に入られたらその日は釣りにならない。なので、林道入り口への早着きを目指して、気合入れて暗いうちに出発した。

林道入り口に着いたのは6時で、すでに十分明るかったが、まだ一台も止まっていなかった。

林道突き当たりまで25分歩く。猛暑日続きの影響は思ったよりも大きく、けっこう減水している。前回は「釣れる予感しかない〜!」と歓喜の声を上げながらテンカラ竿を振った。 → 伊賀谷を釣り登る(6月25日)

しかし今日の水量の感じだと、ちょっと苦戦するかもしれない。

白滝谷に連続で通って、なんとかルアーでも渓魚を釣れるという自信がついたので、この日は最初からルアーを投げた。

前回は流れのそこらじゅうに魚が分散して、毛針への反応も早かったが、いい感じの水量の瀬はことごとく、チョロチョロ瀬あるいはほとんど水面が鏡のように平らなヒラキになっている。

しかしそんなシビアな状態でも、落ち込みから続く流れの中にスプーンを投入したら、両脇の石の陰から渓魚がサッと飛び出して来る。

小さな滝壺状態の落ち込みの白泡の中からも、何度か手応えがあった。明快なクッと言うアタリは、おそらくアマゴだろう。

石陰から飛び出した小アマゴ。一瞬イワナかと思うほど黒ずんでいた

釣れるのは、ほとんどが15センチに満たないイワナだが、たまにチビアマゴも釣れる。

隠れ家の石陰から飛び出したアマゴは、イワナかと見まがうほど黒ずんだ色をしていて面白い。

この日はほぼ、2.2gの軽い緑系スプーンで通したが、やや流速が強い落ち込みで、3.5gの赤金スプーンに替えて流したところ、23cmはありそうなアマゴが足元までチェイスしてきて興奮した。こういうチャンスを確実にモノにして釣れるようになりたい。

滝壺でヒラを打つ渓魚

伊賀谷左股の流れが大きく湾曲するあたりに、唯一、高巻きが必要な滝がある。俺が勝手に伊賀谷核心部の入り口と位置付けている滝だが、深場狙いが難しいテンカラ釣りをやるようになってからは、その滝壺もほとんどスルーして来た。

しかし今回は、ワクワクしながらルアーを投入。2〜3度目かに投入した時、ルアーが通過するあたりで、20cmを軽く超える渓魚がギラっと横向きにヒラを打つのを見た。

伊賀谷で唯一の、高巻きが必要な滝

その後は投入しても反応がなかったが、滝壺でヒラを打つ渓魚(おそらくアマゴ)の姿はしっかり目に焼き付いた。深場から大物を釣り上げられる日が、そんなに遠くない気がしてきた!

渓魚がヒラを打つのを確認して、やや興奮気味に滝を高巻きする。

滝を越えた先の伊賀谷は、最上流部で高原状の穏やかな流れに変わるまでの間は、岸壁に挟まれた小ゴルジュや、巨岩の間を小滝が連続して流れ落ちる、ちょっと険しい渓相となる。

大物アマゴに見破られる

険しい流れとは言え、慎重に歩けば特に危険な箇所はないのだが、釣りに熱中してると、しょうもないところで転倒してしまうことがよくある。

今回は、滑った弾みで水中の岩に右足を強打してしまい、滅多にあたらないツボを直撃。右足に神経痛のような激痛が走った。普段なら数分で引く痛みがなかなか引かず、足を引きずって急坂を下山するハメになった。

何ということのない転倒で、竿を折ったりリールを破損したりもするので、やはりコケないように気をつけようと心に誓った。

この日は緑系のスプーンで通した

落差の激しい流れが続く中、落ち込みの脇のほぼ止水のところにスプーンを投入したら、飛び出した渓魚のオレンジ色の鮮やかな腹が見えた。合わせそこねたが、20センチを超えるイワナだったと思われる。

浅い流れでは、チビイワナやチビアマゴがチェイスしてくるのが見えて楽しいので、くるぶしほどの浅いヒラキの中で何気なくスプーンを横に泳がした。すると、24cmほどはありそうな良型アマゴが、悠然と岩陰に隠れるのが見えた。

しまった! 完璧に慢心していた。

伊賀谷の源流は八丁平の穏やかな流れとなる


下流から忍者のごとくアプローチして、スプーンを、流れに丁寧に乗せて自然に流したら、このでかいアマゴが食いついたかもしれないのに。

伊賀谷の険しい部分を登り切ると、谷の両側は一気に明るい雑木林が広がる。そして高原状の八丁平をゆるやかに流れる源流部分へと続く。この緩やかな流れの中にも、いいサイズのアマゴがサッと走るのが見える。

この日は、最後に足を強打して、ヒイヒイいいながら下山する羽目になった。冒頭にも書いたように、同じ日の午後に明王谷では死亡事故が起きていたこともあり、忘れられない遡行となった。

真夏の渓はやはりシビア。釣れるのは小イワナがほとんど

この日も結局、キープサイズの魚を手にする事はできず、釣っては放し、釣っては放しの繰り返しだった。

しかし、深場でのギラっとした反転や足元まで追ってきたアマゴなど、釣れ損った悔しいシーンがいくつも目に焼き付いている。

そろそろ、塩焼きサイズの渓魚が釣りたい。